邪神たちの楽園 立ち読み
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るのである。  だが、彼女は一向に乗ってこない。  ますますもって、剛志は一人でしゃべり続けた。 「でね。うちの親父、曰く・・・、あ、親父つっても一応、司法書士。それも、この道一筋三十年・・・。その親父が言うには、外国人でもないのに今の日本で戸籍がないなんて、何らかの不都合な力、つまり、権力ってやつが働いているに決まっている・・・って言うんですよ。」 「権力」という言葉に彼女は敏感に反応した。 「どういうこと?」 「いや、住民票と違ってですね、戸籍は結構、大変なんですよ。だって、親の名前からすべて出てくるわけじゃないですか。それに、仮に戸籍に入れ忘れていても入学の段階でわかることだし、意図的に入れなかったとしても、その後の生活で本人が気づくはずなんすよ。だって、戸籍がないってことは住民票もないってことで、そうなると家も借りられないし、車だって買えない07第一章 後輩 小森剛志

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