大規模修繕工事新聞2020年2月号(第122号)
2/58

なぜ説明責任を果たさないのか―管理会社から返答なく、契約解消へ闘!え◇2 「今回で最後になりますね」―昨年8月、竣工以来40年以上にわたって管理を委託してきた業界最大手のT管理会社との最後の理事会だった。 「何度も言いますが」。理事会の言い分は一貫している。「私たちが御社に求めているのは、大規模修繕工事の瑕疵に対する説明責任です」。 2010年に3回目の大規模修繕工事を実施。その後、屋上防水や鉄部での施工不良が顕著になった。管理組合は施工したT社に工事の瑕疵を追求した。しかし、T社は大規模修繕工事の瑕疵であると認めているのかいないのか、あいまいな回答を繰り返すばかり。管理組合は「具体的な説明を」と再三求めてきたが、最終的に管理会社を変更せざるを得ないという判断に至った。 実は管理組合では2016年、T社が下請け業者に業務を丸投げしたままにしないこと、大規模修繕工事に起因する保証を相互に確認することを条件に、管理委託契約の継続を決めている。 それから3年。両者の関係は改善されなかった。T社の対応はいつまでたっても「のれんに腕押し」だった。そして、ついに契約解消という結果になってしまったのだった。 管理組合が工事の瑕疵だと主張しているのは、屋上防水の立ち上がり部分や鉄部塗装の部位。屋上防水の立ち上がり部の裏側は塗装不良68カ所を確認した。 共用廊下の手すりの鉄部は、大規模修繕工事の6年後ですでに錆でボロボロ。手すりの最下部を点検鏡で確認すると、塗装されていないことが明白だった。 しかし、T社工事部長名で送られてきた「大規模修繕工事後7年目点検報告」、委託契約に含まれる毎年の「健康診断報告書」にも管理組合が問題視している個所への回答には一切の記載がない。 そして管理組合の追求に、さらにT社は驚くべき対応をとる。「未塗装部分については、その塗装費用を換算し、返却します」。 管理組合だけが問題視している部分のお金は返すから、管理組合で勝手に直せといってきたのだ。 管理組合としてはもちろん納得できない。大規模修繕工事は請負業務。失敗したから金を返すといわれても、T社には信頼関係をもとに発注してきたはずだった。 最後の理事会である理事がさらに追求した。「それでいいんですか?それが御社の回答で仕方ないのでしょうか?」。 T社担当者が歯切れ悪く答える。「個人的に答えづらいのですが、誠意はないなと思います」。 とはいえ、彼の立場としてはあくまで「大変申し訳ないのですが、会社としての回答として出しています」。サラリーマンとしてそう言わざ点検鏡で共用廊下の手すりの裏を確認。錆でボロボロ同じく点検鏡で確認すると、塗装されていないことが明白大規模修繕工事の6年後、鉄部はすでに錆で穴が空いているマンション管理組合奮闘記Data. 1

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る