大規模修繕工事新聞2019年8月号(第116号)
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201985◇..7全国建物調査診断センター理事:佐藤成幸(マンション管理士、一級建築施工管理技士、管理業務主任者) 現在、長期修繕計画を整備していない管理組合はほぼありません。そしてその大半が分譲時から、もしくは見直し時点から、管理会社により作成された長期修繕計画を使用しています。 しかし、だからこそ長期修繕計画を管理会社から管理組合の手に取り戻すことが第一です。その上で管理組合が自主的に長期修繕計画を作成して主体性をもって使用していくことが重要と言えます。1. 現状の建物の劣化状況をしっかりと把握することからはじめる 既存の建物は経年劣化について、その周辺環境の影響を受ける。そして、その劣化状況のスピード度合により、修繕周期が具体的に設定できる。 したがって使える長期修繕計画作成の第一歩は建物劣化状況の調査である。2.メンテナンスや保守状況の維持管理データを精査する 同様に設備関係は月々のメンテナンスや保守による維持管理を行っている。この「手入れ」の有無により、設備の寿命に変化が生じる場合がある。 長期修繕計画作成に当たり、設備に関しては、この維持管理データについても最新情報を反映することが必要である。3.工事範囲と工事項目を整理し、各部位の修繕周期を検討する  マンションにより、工事対象となる工事範囲とその項目は異なる場合がある。国土交通省のガイドラインを参考にしつつも、そのマンションごとに適合した工事範囲を整理することが重要である。 また、上記1と2の作業により、耐用年数と修繕周期を具体的に検討し、落とし込む。4.仮設工事も含めた各工事費用を明細方式にて積算する  工事費用を積算する場合は、可能な限り対象工事範囲の数量と単価にて計算する。 また、その際には仮設工事も具体的な仮設計画をもとに現実的な検討を行った上で、その費用を計上することが望ましい。 特に大規模戸数マンションやタワー型マンションではこの仮設工事に関わる費用のウェイトが高いので、あらかじめ十分に考慮していないと実際の工事発注時にかい離が大きく出る恐れがある。 本当に管理組合のための長期修繕計画になっているかどうかが重要です。第3回では長期修繕計画を管理会社から管理組合の手に取り戻し、その上で長期修繕計画の維持管理をどうすればよいかについて掲載します。第2回「本当に使える長期修繕計画作成のフロー」おざなりの「長期修繕計画」は意味がない!

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