大規模修繕工事新聞2019年7月号(第115号)
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201975◇..7全国建物調査診断センター理事:佐藤成幸(マンション管理士、一級建築施工管理技士、管理業務主任者) 現在、長期修繕計画を整備していない管理組合はほぼありません。そしてその大半が分譲時から、もしくは見直し時点から、管理会社により作成された長期修繕計画を使用しています。 しかし、この管理会社作成の長期修繕計画に関してさまざまな相談が寄せられてきています。1.支出計上されている工事費の詳細やその内容がよくわからない、不透明である ○億円、○千万円といった大きな単位の工事費用が記載されているが、工法や材料の根拠、そして数量や明細に関わるものの資料や説明が不足している。 説明を要求すると「素人ではわかりにくいですからね」などと一言あって見方もわからない資料が出てくる。2.管理会社に紹介内容を聞いても納得いく説明をうけられない 本当にこの工事金額が必要かと聞いても合理的に納得できる説明を受けられない。工事費用が高いのではないかと問いただすと、減額しましょうかなどと言われたりする(簡単に下がるものなの?)。 挙句の果てに「何かあったら大変ですよ」「長期修繕計画上の予算ですから」等と言われて、いつの間にか丸め込まれた感が残ったまま協議が終わる。3.収入計上されている積立金や値上げや一時徴収金額が現実的なものか不安がある 10年経過前後から、長期修繕計画に積立金の2倍、3倍の値上げ改定が盛り込まれていたりする。値上げのグラフを見ると右肩上がり一方であり、この先永遠に上がり続けるのか、と不安になる。 またグラフを見たときにある時期を頂点に収入のヤマが極端に高くなっているので確認すると、一時金徴収に100万円単位の金額がこっそり記載されているケースもあった(相談があってはじめてわかった)。4.積立金の値上げ金額に関して提案した理事が非難されたり、総会が炎上するのではないかと心配になる 最近でこそ、長期修繕計画の理解が進んできているので、積立金の値上げについては頭からの反対にはなりにくい。ただし、その反面、理事への非難が陰に隠れて水面下で拡散する懸念がある。理事会メンバーもマンションは生活の場なので、そういうストレスを抱えて住みたくはない。 また経済的な問題から値上げ反対の意思を「お願いだからやめてほしい」という懇願の表現をとりながら、反対するケースもみられる。5.長期修繕計画で計上されている工事金額とほぼ同金額の工事見積もりが提出された 管理会社から大規模修繕工事の見積もりをとったら、やっと値上げして確保した長期修繕計画の予算通りの金額であった。積立金の値上げは管理会社のためであったのかと疑りたくなる。 本当に管理組合のための長期修繕計画になっているかどうかが重要です。第2回では管理会社から管理組合の手にもどすための長期修繕計画作成フローと維持管理について、掲載します。第1回「管理会社作成の長期修繕計画への相談例」おざなりの「長期修繕計画」は意味がない!

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