大規模修繕工事新聞2019年1月号(第109号)
25/59

201915..5 ただし、この管理組織は建物の資産価値を適切に保持する目的で構築されているため、清掃やゴミの処理の処理といった日々の労務については法律では定められていない。 そこで有効になるのがガルディアンや管理会社による管理である。特にガルディアンによる管理は、ガルディアンもまた居住者であり、居住しながら管理業務を行うので、居住者との関わり、近隣のガルディアンとの関わりがあり、地域社会の人的ネットワークの要になっている。■ガルディアンの資格取得・スキルアップ・職業適正証書(CAP)1.資格試験  専門知識:自然科学、経済学、社会学等  一般教養:言語、社会科、理科、体育等2.実習   掃除等の技能の他に、近隣住民の苦情処理やトラブルの仲裁、新規居住者への対応、入退去時の瑕疵点検の実施訓練等・ガルディアン向け職業教育 すでにガルディアンとして働くものを対象に、数日~3カ月程度の講習期間を行うスキルアッププログラムを行う機関がある。ガルディアンの専門性の向上のため、住宅事業者からの職業教育プログラムの需要は高い。・ガルディアンの教育事例 民間区分所有共同住宅のガルディアン向けの教育プログラムを提供している機関Eは非営利組織であるが、その設立には住宅管理会社A、不動産関係の保険や改修の相談を行う会社Bが関わっている。 不動産に関わる2社がガルディアンの職業を活性化し、プロモートするための戦略として職業教育に重点を置いた。「ガルディアンを置くことが経済的に負担になるのであれば、きちんとした教育を受けたガルディアンを置けばいい」。 人件費を単純に無駄な経費と捉えるのではなく、「ガルディアンがいることで、『不動産が管理されている、安全である』という理解につながり不動産価値があがる(資産価値に反映できる)」という価値観に転換しているのである。■終わりに 日本の住宅事情と比べ、地域社会のつながりを補強すること、地域の安全性や居住性、快適性を向上することにこれまで以上に注力が求められているという点で、フランスと日本の地域問題への取り組みの方向性は異なるものではない。 フランスでは、人を常駐させる管理方法を、共用空間の維持管理の窓口と考えるだけではなく、地域のマネジメント主体を配置することにもなると捉えている。 経済性や効率性に偏重した物理的な維持管理だけでは、住宅や都市は持続しない。住宅とそれを包含するコミュニティが、持続的な都市居住を実現することを目指しつつ、フランス首都圏の共同住宅マネジメント(ガルディアンを通して住宅を長期間にわたり管理する手法)のように、共同住宅とコミュニティとを持続的・広域的にマネジメントするための管理体制を考え出さなければならない。大阪支店:(06)4804-3123 神戸支店:(078)646-3511関東防水管理事業協同組合

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る