大規模修繕工事新聞1802(98号)
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NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2017年12月5日付第423号・2018年1月5日付第424号「論談」より 輪番制で理事になり、互選で理事長を受けました。 そうしたら、ある時、ある住民(組合員)から直接、自宅に質問状が届き、「文書で回答せよ」と書かれていました。 また、電話でも、質問というより、延々とクレームを言われることがあります。 理事長といっても、管理組合運営についてはよくわかりません。どうすればよいでしょうか。 国交省は民泊新法の施行に対応するためとして、マンション管理組合に対し、規約の改正、整備が必要だということで、規約案を発表し、説明会なども開催している。 これはマンション管理の適正化を図ることを担当している行政当局としては、本末転倒である。 そもそもこれまで、相当数のマンションで、違法な民泊によって騒音やゴミの放置などで多くの被害が発生し、社会問題となっていることは周知のことであろう。 大方の管理組合規約には住居専用の規定があり、その規定によって短時間のおけいこ教室や学習塾も申請を受け、許可したり、禁止したりしているところが多い。 民泊というものが、それらに比べるとはるかに長時間、周辺の住居に影響を与える行為であることは言うまでもない。 それを「民泊は、通常の住居としての使用範囲」という勝手な解釈を取り決め、「規約が今のままなら民泊できる」として、管理組合に改正を求めているのが今の実態 民泊新法が成立した。今年6月15日が決定し、その3カ月前の3月15日には事業者の登録が開始される。マンションを含め、違法民泊が横行する中で、新法の施行には問題が山積みされている。である。 つまり規制緩和を口実にした一部の金儲けのために、もともと何の規制もなく自立的に管理組合で決められるべき規約を、こうすべきだという形で新たな規制を管理組合に迫っていることにほかならない。 規制強化ではないか。 ただ、われわれとしては本来それぞれの現行規約で許可、不許可の対応をすればいいのであるが、そのままにしておくことでいっそう被害をうけることだけは避けなければならない。 当面の管理組合としての対応については、次のように考える。① 理事会で「住居専用の規約は、民泊の禁止を含む」という規約解釈を決めておく。総会で行えばもっといいが、理事会で十分である。② ほとんどの管理組合で民泊反対の組合員が圧倒的に多いであろうから、条件のあるところでは、「住居専用」の部分に「いわゆる民泊は認めない」旨の文言を加える。この場合、国交省の条文例では抜け道があり、適切でない。③ なお、居住者がいて行われるいわゆるホームステイは「民泊」に入らないと思われる。委任されたものではないから、個々の区分所有者の受任者であるとみることはできないというわけです。 これにより、管理業務に支障を来すほどの執拗な問い合わせや苦情について、理事長が個別に直接回答する必要がないことが明らかになりました。 同じような内容の訴訟では、平成13年10月の東京地裁判決でも原告の住民が敗訴しました。法務省も「理事長は個々の区分所有者は個々の区分所有者の受任者ではないので、総会報告でよい」との見解を示しました。 ところが、平成28年12月9日大阪高裁で、住民が会計書類等の組合資料の閲覧、組合員名簿の写真撮影を認める判決例が出ました。このマンションでは日常管理や修繕工事において、理事会の組合運営に不信感を抱いたことには相応の理由があったと判断されました。 クレーマー的な住民がいる一方、理事会側に問題がある場合もあります。どこまで報告義務があるかどうか、管理組合が管理している書類を重要性(プライバシーなど)に照らして分類し、管理規約に明文化することを推奨します。<参考> NPO福岡マンション管理組合連合会・創立30周年記念誌『管理組合読本』Q53 住民からの度重なる質問、どう対応すればいいの?10民泊新法にどう対応するかベストアンサーに選ばれた回答理事長は住民への報告義務なし書類閲覧等、規約への明文化を推奨 理事長は、取り扱う業務について、総会で報告する義務はありますが、住民に直接知らせる義務はありません。 その根拠に平成4年5月22日の東京地裁判決(判例時報1448号)があります。 区分所有法上の管理者である理事長は、総会で選任された理事数名の中から互選によって選出されたものに過ぎず、個々の区分所有者から直接、管理者になることを教えて!管理組合交流相談室

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