大規模修繕工事新聞1710(94号)
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 このほど国交省が「外部専門家の活用ガイドライン」という文書を発表した。2016年3月に新しい標準管理規約を発表したことにともない、そのなかで提唱している外部専門家を理事長や管理者として受け入れる際の「ガイドライン」の内容を解説したものである。 しかし、われわれは国交省がこういうものを出すこと自体に疑問を持つ。 そもそもマンション標準管理規約は管理組合が規約を作成あるいは改定する際の「参考」として出されているものである。 しかも、第三者である外部専門家を、管理組合の業務執行者として内部に導入することを積極的に推進することは、この間の標準管理規約をめぐる過程でも多くの批判のあった問題である。それをあたかも国交省が導入を推奨するような形で見解表明をすることは不適切だといわなければならない。 だいたい、国交省はこのガイドラインを管理組合向けに出したというが、「担い手不足」に直面しているような管理組合はこんな文書を自ら見ることはない。 むしろ外部専門家が国交省のお墨付きが出たと管理組合に働きかける道具にするだけだ。同じ国交省から出されているマンション管理適正化指針は管理の主体としての管理組合(区分所有者)の役割を正当に強調しているが、ガイドラインは外部専門家のメリットとして「意思決定の迅速化」をあげ、結局のところ管理組合員にはできないから外部理事長(管理者)に意思決定そのものを委ねようという意図であり、きわめて問題である。 さらにガイドラインは全文34ページの相当部分を使って、問題発生時の対応を細則や契約書で明確にしておくべきだとし、対応案を列挙している。 この点は逆に、これだけ危険性の多い外部専門家の導入をなぜ推奨するかの問題点を、かえって示しているともいえるのである。この点からも、外部専門家は問題別、課題別に依頼するのが適切で、常時助言を求めるにしても顧問などの形での関与がよい(NPO日住協論説委員会)と考えられる。 12「外部専門家の活用ガイドライン」が出されたが…NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2017年9月5日付第420号「論談」より

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