大規模修繕工事新聞101号(2018年5月号)
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201855..9 実費精算とは、見積もり依頼に想定した劣化部位の工事数量と、足場をかけてから施工会社によって全数調査で算出した実際の工事数量との差を精算すること。 見積もり依頼時に正確な劣化数量で工事の内訳明細書の数量を設定することは極めて困難である。 図面上で確認できない劣化部位は建物調査時に現地確認を行う。しかし、足場がないため、確認できる範囲は通常歩行が可能な範囲、打診棒などで手の届く範囲となる。 つまり、建物調査の範囲内で確認した不良個所から建物全体の劣化数量を推測し、まずは改修対象となる「想定数量」を設定。この想定数量をもとに施工会社へ見積もり依頼を行うのである。 想定数量はあくまでも通常歩行範囲内等の建物調査であることから、実際に工事を行う劣化数量を確認できるのは、着工後に足場がかかってからの、施工会社による「全数調査」で確認することになるわけだ。 このため、実数が想定値より少ない場合は工事代金の減額、想定値より多かった場合は工事代金の増額になる。そこで管理組合としては、補修工事が増額となった場合に備え、「予備費」を予算化しておくことが必要となる。 近年は異常気象、地震、台風と世界中で災害が猛威をふるっています。被災に遭われた方々はさぞかしつらかった思いをされたことでしょう そしてこの「災害」という言葉は、ずいぶん昔、私が経験した、とあるマンションの火災事故を思い起こさせるのです…。 出火元は最上階の住戸からでした。すぐに消防車が駆けつけ、その火事はほとんど燃え広がることなく消火されたのですが、ここで予期しないことが起こったんです。 問題は火を消すために放水された「水」でした。二次被害とでもいうべきでしょうか。消火のために建物に放水される大量の水は、ナイアガラの滝のように流れ落ち、最上階から1階までを水浸しにしたのです。 とりあえず鎮火したものの、階下住戸の家財など、水浸しになったものは各戸がその保険などで賄わなければなりません。出火元には賠償義務がないからです。 とはいえ、原因は出火元の住戸ですから、被害に 予備費の目安としては、工事費の1割というのが一般的だ。とはいえ、「1割程度の差」を予算化したところで、基準はあくまで「想定値」である。想定外の増額となるケースもあるので、管理組合としても理解と、増額になった場合のこともある程度予期しておきたい。 想定外の増額となった場合の対策としては、工事項目に優先順位をつけ、除外や延期ができる部位は次回の工事に回す、タイルなどが剥落しても被害の少ない個所は除外するなど、工事内容の見直しで適正な減額案を検討・選択することがあげられる。あった各戸に対しては20万円くらいの見舞金を払うのが一般的だといわれています。 ただ、そういうご家庭に限って支払えない傾向にあり、いたたまれず引っ越していってしまうという結果になりがちなんです。私が経験したケースもそうでした。 引っ越しの日、出火元のご家族がいざマンションを出発しようとしても、見送りなどありません。つらいなあ、と思っていたんです。 ところが、ふと気づくと小学生くらいの子どもたちが徐々に集まり出したんです。 それはお子さんがマンション内で友情を培った友だちでした。親同士の問題なんて、子どもたちには関係ありませんからね。 涙ながらに握手を交わし、姿が見えなくなっても力いっぱい手を振り続ける子どもたち…私はドラマのようなワンシーンを目のあたりにしました。 そして、子を持つ親として、不覚にも涙が、涙があふれ出ました。負けんなよ!って私も思い切り手を振っていました。 専有部分の火災保険も含め、防災対策はしっかりしましょう。これは自分やマンションだけでなく、周辺住民や自分の家族の人生も左右することもあるのですから。劣化タイルのマーキング。足場をかけなければ全数調査はできない「火事が起きたときはつらかった」…ある管理会社フロントマンの手記より…大規模修繕工事用語の説明実費精算とは?

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