昭和33年の10円玉 立ち読み
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ド、長島・・・。背番号3。」というコールが聞こえた。   いた。   「お父さん!」を連呼してしまった。   父はあごでグランドを指した。 私もそれにつられるように、グランドに視線を落としたとき、「3番、サー「あれが、巨人の新人、長島だ。」 父はぶっきらぼうにそう言った。 そこには、若々しい長嶋茂雄がいた。 私は思わず、興奮した。子供なんだから、興奮していいんだとわけのわからない理屈で納得して「お父さん!お父さん!長島はね、長嶋は凄いバッターなんだよ!」 父を「お父さん」などと呼んだ記憶は絶えてこの方なかったが、思わず、「心配いらん。稲尾は絶対に負けん。長島のような新人とは背負って       07

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