大規模修繕工事新聞2019年3月号(第111号)
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◇4 成年後見制度は認知症、知的・精神障がいなど判断能力が不十分な人を支援する制度です。 認知症と思われるマンション住民に対して、本人に親族がいる場合は、まず親族に連絡して、対処を依頼する方法が最初の対応として多く取られていますが、単身で親族がいない、もしくは親族の連絡先がわからないことも多く、手詰まりとなるケースがあります。 また、親族に連絡がついたとしても対処に非協力であることも多いようです。 拡大する孤立した認知症高齢者が今後のマンション問題として捉えらています。認知症高齢者の対応はだれがするか 管理費等の滞納のほか、区分所有法による共同の利益に反するような行動(暴言を吐きながら徘徊したり、ゴミ屋敷化など)がある場合は、当事者である管理組合が解決しなければならない問題となります。 管理会社に頼ったところで、「認知症高齢者への対応にフロントマンや管理員等の現場職員がかかりきりになると、現場の業務にかなり支障が出てくる」という回答が返ってくると想定されます。 さらに後見人は親族に限られ、自治会や管理組合が後見人として申し立てをすることはできません。とはいえ、独居の認知症高齢者が増える中、親族が見当たらないというケースも増えています。【事例】 5年の管理費等の滞納により、管理組合が訴訟を提起。59条競売による強制執行で居室、家財を差し押さえられた人のケースです。 後にこの人は認知症だったことがわかり、裁判後に施設に入ることになりました。この人は別にもマンションを所有していましたが、管理費等の支払いをせずに寄付や物品の購入契約などを繰り返していたようです。 そもそも成年後見制度を利用していたら、管理費等の滞納も、そして管理組合として強制執行の裁判を起こす必要もなかったかもしれません。 マンションにおいてはどのような対策が今後必要になるのか、将来的な課題といえそうです。 まずは情報の収集からはじめることが肝心だと考えられます。自治会が対応するのか、管理組合がやるのかではなく、住民同士の共通の課題として捉えていく必要があるでしょう。 ●相談先:一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター      〒105−0001東京都港区虎ノ門4−1−28            虎ノ門タワーズオフィス10F      http://www.cosmos-sc.or.jp拡大する認知症問題と滞納問題マンションと成年後見制度

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