大規模修繕工事新聞2018年12月号(第108号)
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8 管理組合の収納口座の印鑑を所持するなどして10月、国土交通省に九州の管理会社が業務停止命令の処分を受けました。こうした事案はなかなかなくなりません。ここでは「現金事故を防ぐポイント」と題して、その<協力:双日総合管理㈱ 難波純一>一例をシリーズで紹介します。<事故事例4> 管理員が理事長印を預かり、個人用備品購入代金、飲食代金、慰労金等の領収書ならびに請求書に確認印をなつ印して、フロント担当社員を経由し、会社の会計部に提出。備品はそのまま流用、飲食代金については現場の「小口現金」から流用、慰労金については会計部から受領した現金を着服していた。 当該管理員は、約18年同じマンションに勤務しているため、管理組合ならびに会社からも信頼を得て、理事会から折衝業務を任されていた。このためフロント担当社員をはじめ、現場に会社の社員が関与できない状況にあった。<再発防止策>①会社の会計部は支払いの際、請求書、領収書、工事完了確認書原本を確認する。②フロント担当社員ならびにその上司の理事会への関与を強めるため、理事会にフロントが毎回出席し議事録を作成後、上司に提出する業務手順に変更する。③理事会議事録にない支払いについては、上司が支払いの可否について理事長に直接確認する。④定期的な人事ローテーションを行う。⑤備品リストを作成し、棚卸を記録する。<事故事例5> 管理員は、支払申請時に消えるボールペンで記載した支払申請書と払出票を提出。理事長がなつ印した後で数字を書き換えた。また、名義変更時に数時間、理事長より一時的に銀行印を預かり、白紙の払出票になつ印したものを保管しておき、後日出金して着服した。 管理員は発覚を防ぐため、理事やフロント担当社員が通帳原本を確認できないよう誘導するとともに、監査時や総会対応時には通帳コピーを偽造したものを提出。銀行残高証明書についても偽造し、原本に見せかけていた。 通帳は管理事務室に保管していたため、当該管理員は理事長から出金に必要な帳票になつ印してもらうことで不正な出金が可能であった。当該管理員は約7年、同じマンションに勤務していた。<再発防止策>①管理組合サイドに理事長印等の取り扱いの留意事項を周知する。②管理員による理事長印の保管、なつ印代行、予備の払戻請求書へのなつ印を禁止とする内容を業務記述書等に記載する。③マンション会計部ならびに内部監査部門は通帳原本および預金残高証明書原本を確認する。④通帳の保管を従来の管理事務室保管から本社会計センターに変更する。⑤通帳レス・ファームバンキングを導入する。⑥定期的な人事ローテーションを行う。⑦内部監査部門が適切に機能するために、熟達した専門的能力を持った人材を配置する。管理会社 社員が説く現金事故を防ぐポイント③

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