大規模修繕工事新聞2018年11月号(第107号)
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〈事故事例2〉 管理会社のフロント担当社員が親切を装いながら(私がすべてやりますから安心してください等)、理事長から管理組合名義の保管口座の印鑑と通帳を預かっていた。そして、その保管口座から現金を引き出し、着服を繰り返していたのである。 当該フロントは着服を隠ぺいするため、本社のマンション会計部に金額を改ざんした通帳ならびに銀行残高証明書のコピーを提出。しかし会計部は通帳、銀行残高証明書の原本を確認することなく、コピーのみで確認をした。 当該フロントは、同じ物件を長期間担当し、管理組合や会社からも信頼を得ており、理事会とのやり取りを一人で行っていたため、覚知が遅れたという。<再発防止策>①現在のマンション管理適正化法では、管理会社が理事②管理組合が保管する通帳・印鑑等の保管状況を管理組合と共同で確認し、「通帳・印鑑等の保管台帳」等で管理する。③フロントが通帳または銀行残高証明書を改ざんできなくするため、管理会社のマンション会計部は、銀行口座の残高を銀行残高証明書のコピーではなく、銀行残高証明書の原本で確認する。④理事会へは担当フロントだけでなく、年に数回、複数名で出席する。⑤なつ印代行行為、予備の払い戻し請求書へのなつ印の禁止を業務手順書に追加する。〈事故事例3〉 管理会社のフロント担当社員が理事長の交代時に管理組合の理事長印を一時的に預かり、現金支払い指示書(架空の組合発注工事代金を請求)ならびに銀行の払い戻し請求書を偽造し、支払手続きを行い、本社のマンション会計部から受領した現金を着服した。 当該フロントは、過去の実際の請求著をカラーコピーし、工事内容や金額を改ざんして、架空の請求書を作成。着服を隠ぺいするため、会社向けと管理組合向けの2種類の月次決算報告書を作成し、それぞれに提出していた。〈再発防止策〉①事例2の再発防止策と同じ②本社のマンション会計部は支払いの際、請求書・領収書・工事完了確認書原本を確認する。③工事代金の支払いは振り込みとし、現金での支払いは認めない。④マンション会計部は、月次決算報告書を理事長に直接郵送する。8 マンション管理業界では管理組合財産の毀損事故を防止するため、既存事故の事例を想定し、再発防止策に取り組んでいます。「現金事故を防ぐポイント」と題して、その一例をシリーズで紹介します。長印の保管を禁止している。マンションの建物調査から大規模修繕工事まで〈協力:双日総合管理㈱ 難波純一〉伝統に培われた信頼と技術を提供いたします。東海塗装株式会社リニューアル事業部現金事故を防ぐポイント②管理会社 社員が説く

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