大規模修繕工事新聞 102号
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201865..7紙上採録 全建センター第33回「本音セミナー」「大規模修繕100組合の教訓」から学ぶ事例研究と考察3/25 東京・京橋 住宅あんしん保証本社会議室にて①会社としての形態がある 管理組合は権利能力なき任意の社団という位置づけがされていて、その発注形態において、組合総会で意思決定をし、予算の承認を得て、そこではじめて執行できる仕組みになっています。 すなわち理事長といえども、承認を得ていない金は1円足りとも発注することはできない、契約行為もできない、こういうことになります。 実態のないブローカーに発注するという行為は管理組合の公金といったものを危険にさらしかねないということがありますので、そうしたことを避けるということが必要になります。 会社形態のない建築士事務所は個人商店となりますが、それでも建築士の仕事はできます。とはいいながら、個人商店の場合は、個人の発想と経験と力量の中で要求されたものを管理組合へアウトプットしていくことしかできません。個人単体のスキルに大きく偏りがちになります。 また、その建築士の先生が体力的、病気や何かでつまずくことがあると、管理組合との継続的な契約を履行することが直ちに不可能になるというリスクがあります。 このため、一般的には長年にわたり、継続的に事業を営んでいる株式会社の法人組織企業の建築士事務所を選定する場合が多くなります。 コンサルタント選定は、管理組合総会で比較的容易に工事計画の承認を得ることを考慮する目線が重要です。 結局は管理組合の総会を通らないと、契約行為ができない。1円足りとも出金ができません。 そうすると、総会の承認を得やすいか、得にくいかに耐えうるのは、個人よりこうした法人組織企業の建築士事務所のほうが安定性があると、考えられているようです。 全国建物調査診断センターは3月25日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第33回セミナーを開きました。ここでは㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)の佐藤成幸専務が講師を務めた「コンサルタント会社選定時に考慮するべき事項①~⑥」から前半部分を掲載します。コンサルタント会社選定時に考慮するべき事項 ①会社としての形態がある ②法令上の申請登録がある ③技術力がある ④実績がある ⑤会社の経営が健全状態である ⑥会社の規模がある程度ある<構成:編集部>②法令上の申請登録があること 一般的な経年劣化による、外装関係の補修や防水、鉄部塗装などでは、建築士の名称独占業務としての必要性はありません。 したがって、建築士でなくともコンサルタントというのは経験や知識があれば、アドバイスする程度のことはできます。 できるのですが、建築士の倫理観や使命感、所属の公開性等の観点から、建築士事務所登録がなされていることのほうが好ましいというふうに感じます。 建築士という「士(さむらい)」資格おける、倫理観や使命感というものは消費者側にあって、業者に対してプロフェッショナルな立場から消費者保護のために行動していく、発注者の利益のために行動していく、というのが本来の思考です。 このため、建築士事務所登録という前提の上で、倫理観や使命感を持つ建築士であるかどうかしっかり見る必要があると考えます。③技術力があること 新築と違って改修工事は、その場その場でイレギュラーが必ず発生してくるものです。 コンサルタントの役目というのは、工事がはじまってからは施工者の手抜きがないかどうか、しっかりと図面通りに契約が履行されているかどうかみていくということになるんですが、通り一変のスキル、経験しかない人間は、作業員がどういったところで手を抜くのか、どういった点で工事がやりにくいのか、結果として悪い品質につながりやすいのはどういう部位かなど、建築設計上の立場ではなく施工者の目線から知識を得ている人間が多い。 しかしマンションの場合は住民目線や生活導線といった目線からのスキルが求められます。こうしたスキルも実力とみなされること、経験上認識しております。 さらに改修工事の場合は、区分所有法や管理規約に精通したスキルとしてマンション管理士や管理業務主任者といった資格も好ましいといえます。 マンションという特殊性、共用部分と専有部分の境がどこにあるのかわかないとか、複合型では施設部会と住宅部会、そして全体管理組合がある場合はそれぞれ費用の拠出先が違うわけです。こうした知識がないと、コンサルタントに任せたら余計にトラブルになったなんてことにもなりかねません。 最終的に総会でどのような議案をかけるのかことも含めてアドバイスが必要になります。やはりこうした資格や経験があるなしでは管理組合が受けるメリットが明らかに変わるといえるでしょう。

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