大規模修繕工事新聞電子版dsk18-04
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201845..9紙上採録11/26 東京・京橋 住宅あんしん保証本社会議室にて■合意形成のポイント①前例にならうことも大事 管理組合内の手続きや合意形成を図る方法として、いろいろな実例がありますけれど、以前はこうして対処したとか、暗黙の了解になっているとか、不可逆性の過去を大義にして協力を拒む機先を制することがあります。 レジュメに「あえて前例があるものは前例にならう」「あるいはこの工事のタイミングで一度に解決を推し進めない」と書きました。 例えば、工事中のバルコニーの対処など、区分所有者の費用負担と責任において、専用使用しているものについては、個人で移動、片付けをしていただくのは大原則です。 バルコニーですと、エアコンの室外機、洗濯もの干し、昨今は置き敷きのタイルなども期間中は撤去していただかないと工事ができません。 すべて個人の費用において設置したものになりますので、管理組合が負担するのは少し原則に反するということになります。 しかし、「あえて前例があるものは前例にならう」と書きましたが、十数年に一度の工事のときにこのような対処をしていくという話とは別に、過去何か営繕の工事があったときに、置き敷きのタイルの撤去などを管理組合の費用で一気にやったことがあるという事実があるとすると、そうした前例にならうということも合意の形成では非常に効果的な場合が出てきます。 古いマンションですと、エアコン室外機の天井吊りを禁止にしているにも関わらず、バルコニーが狭いからといって、壁につけている例があります。 大規模修繕工事の数カ月の中だけで、これまでの十数年の規約違反を一気に解決というのは、時間的制約と個人の納得からいっても、かなり難しい問題です。 まずは工事ができる状況にすることが大事で、その後、こうしたものについては順次対処していくほうが得策といえるでしょう。 全国建物調査診断センターは11月26日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第32回セミナーを開きました。ここでは㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)の佐藤成幸専務が講師を務めた「大規模修繕100組合の教訓から学ぶ事例研究と考察について」から、「管理組合内の手続きや合意形成に関わるもの」の一部を掲載します。<構成:編集部> 急がば回れではないですが、工事を優先し、先にはなりますが、規約違反の状況も改善する方法もあります。・あえて前例があるものは前例にならう・この工事のタイミングで一度に解決を推し進めない・ 個別の費用負担について、良し悪しの判断はいったん置いておき、前例があるときはそれを踏襲する・ 規約に抵触する状態がありながらもその状況を前提として工事に対して反対が大半になることが見込まれる場合、まず工事、その後、順を追って規約遵守という考えにて対処する管理組合のコミュニケーション自治組織のコミュニケーション両者の融合 ・ 資産保全は管理組合だが、構成員の区分所有者は同時に近所に住む者同士・顔の見える仲では対立意見も言いにくい・匿名性の意見を言う前に仲間同士で話し合い解決■合意形成のポイント②日頃のつきあいが合意を容易に 管理組合の構成員である区分所有者は、最後はひとつ屋根の下に住む、いわゆる「運命共同体」です。日頃からのおつきあい、コミュニケーションの深さがとっさの際でも合意形成を容易にすることができることがあります。 あるマンションで400台を超える機械式駐車場の部品取り替え工事にあたり、敷地内での駐車場の入れ替えを繰り返し行いながら工事を実施した例があります。 日頃の形成された住民のコミュニティが工事に対する全員の当事者意識につながり、スムーズに進行することができました。「大規模修繕100組合の教訓」から学ぶ事例研究と考察全建センター第32回「本音セミナー」

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