大規模修繕工事新聞1710(94号)
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2017105◇..5拡大する認知症問題 平成28年、65歳以上は約3,461万人(人口比27.3%)。平成33年には3人に1人が65歳以上になると言われています。高齢化による認知症問題は今後広がっていき、10年後、20年後にはもっと拡大していることでしょう。 認知症と思われるマンション住民に対して、本人に親族がいる場合は、まず親族に連絡して、対処を依頼する方法が最初の対応として多く取られていますが、単身で親族がいない、もしくは親族の連絡先がわからないことも多く、手詰まりとなるケースがあります。 また、親族に連絡がついたとしても対処に非協力であることも多いようです。 介護の専門職によると、ある程度症状が進行し、認知症に伴う困った行動が見られるようになっても、適切に介護の専門職につなぐことによって症状が安定し、困った行動が落ち着く場合も少なくないといいます。 問題となるのは、孤立した認知症高齢者なのです。認知症高齢者の対応はだれがするか とはいえ、マンションではこうした認知症高齢者への対応はだれが行うのか。自治体か、自治会か、管理組合か、管理会社か、民間事業者か―。 認知症高齢者を第一に考え、認知症高齢者に悪影響を与えないよう、見守りシステムを基盤とした地域支援といった考え方は当然、自治体から民間事業者まで多数の地域社会の対応が肝心になります。 しかし、管理費等の滞納のほか、区分所有法による共同の利益に反するような行動(暴言を吐きながら徘徊したり、ゴミ屋敷化など)がある場合は、当事者である管理組合が解決しなければならない問題となります。 管理会社に頼ったところで、「認知症高齢者への対応にフロントマンや管理員等の現場職員がかかりきりになると、現場の業務にかなり支障が出てくる」という回答が返ってくると想定されます。 マンションにおいてはどのような対策が今後必要になるのか、将来的な課題といえそうです。成年後見制度について そこで、大きなトラブルになる前に、情報として共有しておきたいのが「成年後見制度」です。 成年後見制度には「法定後見」「任意後見」の2種類があります。「法定後見」は認知症や知的障害など判断能力が不十分またはまったくない人が対象で親族か、親族がいない場合は市町村長などが裁判所に申し立てをします。 一方、「任意後見」は判断力があるうちに自分で後見人と契約することで、まだなじみにくい状況にあるようです。○成年後見制度で受けられるサービス「財産管理」 不動産などの管理・保存・処分 金融機関との取引  年金や不動産の賃料など定期的な収入の管理やローン返済、家賃の支払い、税金、社会保険、公共料金などの支払い 生活費の送金や日用品の買い物 生命保険の加入、保険料の支払い、保険金の受け取り 権利証や通帳などの保管 遺産相続などの協議、手続きなど「身上監護」 本人の住まいの契約締結・費用の支払い 健康診断などの受診・治療・入院費用の支払いなど 医師から病気やケガなどの説明に同席する 介護保険などの利用手続き リハビリテーションなどに関する契約締結、費用の支払い  老人ホームなど施設の入退所、介護サービスなどの情報収集、本人との話し合い、費用の支払いなど 介護サービスや施設のチェック、異議申し立てなど※ 後見人は、賃貸借契約の保証人、入院などの保証人、手術の同意などはできないとされています。毎日の買い物、掃除、食事の準備、身体介護なども行いません。 利用できる制度は何があるのか、その内容はどのようなものなのか。まずは情報の収集からはじめることが肝心だと考えられます。自治会が対応するのか、管理組合がやるのかではなく、住民同士の共通の課題として捉えていく必要があるでしょう。まずは情報の共有が肝心住民共通の課題として捉えていく成年後見制度を利用する

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