大規模修繕工事新聞1706(90号)
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201765..7紙 上 採 録事例の紹介◇560戸のビッグコミュニティー 住民協力で工程も順調 物件概要/西東京市・2004年(平成16年)竣工・RC造・地上14階、16階、18階建・3棟(その他エントランス棟、管理棟など)・560戸3/26 東京・京橋 住宅あんしん保証本社会議室にて 全国建物調査診断センターは3月26日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第30回記念セミナーを行いました。この中から㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)の佐藤成幸専務が講師を務めた「大規模修繕100組合の教訓から学ぶ事例研究と考察について」、その一部を掲載します。 工期/2015年1月9日~8月31日 560戸の郊外型大規模マンション。住居棟のほか、管理棟、集会室やキッズルーム、防音スタジオ、ライブラリー、ゲストルームがある棟、充足率100%の自走式駐車場などがあり、敷地面積は2万4,000㎡を超える。 こうしたビッグコミュニティーだからこそ、住民の生活にかかる工事中の負担(足場や養生シートによる圧迫感、騒音や粉塵等)に配慮するため、「なるべく短い工程管理の作成に努め、それが採用されました」と現場代理人の談。<構成:編集部> ただし、現場代理人の苦労はこれから。作成した工程、工事期間を守らなければならないからだ。 実は、工事前のアンケートの回答率は40%台、住民説明会の集まりも少なく、「住民は大規模修繕工事に興味がないのでは…という感じだった」。 しかし、駐車区画の移動など、お願いすればすぐに対応してくれたり、工事中のクレームも全くなく、こうした住民の対応のおかげで、「タイトな工程も順調に進んだといえます」と話す。 駐車区画の移動については、560世帯に対して560区画という、充足率100%の自走式駐車場ではあるが、空き区画が約80台あった。これを有効活用するため車を移動してもらって空きスペースをつくり、作業員休憩所・資材倉庫、さらには工事車両置き場として使用することができた。 さらにマンションの立地環境では材料の搬入経路の確保が難しく、1階住戸の専用庭に搬入のための足場を設置する方法を採用した。隣の住戸の専用庭を隔てる扉を開放する必要があり、1戸でも反対されると足場の設置もできない環境であったが、これについても住民の反対はひとつもなく、スムーズに作業が進んだ。 こうした大きい工事を実施するにあたり、住民間の協力は欠かせないといった事例である。事例の紹介◇合意の形成と広報に関わる失敗例 物件概要/SRC造・地上5階/地下1階・1棟・58戸 築10年目に1回目の大規模修繕工事を計画。Aコンサルタント会社に調査、設計、施工会社選定までを任せたが、その後、急きょ解約して、当社にて工事監理のみの発注があった。 果たして工事がはじまり、進行するに従い、住民から意見や質問が増大し、施工会社の現場代理人がその対応に追い回されるようになった。 意見や質問の内容は「この部位は工事しないのか?」「外壁工事はこれで終わりか?」「もっと塗装しないとダメでは?」「なぜこの色で塗るのか?」「この部位を修繕する理由は?」等、いずれも工事内容に関わる基本事項ばかりであった。 現場代理人は住民からの意見を受けるたび、個別回答していたが、「ここを修繕してほしい」「いや、やるならこっちだ」など、工事中に住民対立にもなりかねない状況だったため、工事をストップさせてもらった。 問題は、着工前に説明会をしていないことがつまずきのはじまりだった。住民も別にクレーマーではなく、同じ財産を共有するコミュニティの一員であるので、敵か味方という見方をしては絶対にいけないのだが、意見を出すとなるとトラブルの原因になる。 解決策として、当社では公開での住民説明会を開催し、工事内容の説明と工事の意義を説明、十分な情報公開と広報により解決を図った。郊外型のマンション。3棟・560戸のビッグコミュニティー車両を移動してもらい、自走式の駐車場の屋上に工事用スペースを設置全建センター第30回記念セミナー大規模修繕100組合の教訓

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