大規模修繕工事新聞1706(90号)
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201765..5④(80歳・女性・築20年・50戸規模)・「隣の住民が、自分が留守の間に部屋に入り、物を盗んだ」として、何度も連絡をしてくる。実態調査結果の分類(93事例・重複あり) ○興奮・暴言・暴力…………17件 ○理解・判断力の低下………16件 ○見当識の障害………………14件 ○幻覚・妄想…………………10件 ○徘徊…………………………9件 ○実行機能障害………………9件 ○記憶障害……………………8件 ○物取られ妄想………………8件 ○不潔行為……………………4件 認知症は時間をかけてゆっくり症状が進むと言われています。認知症が考えられるような症状が出始めた初期の段階で発見し、スムーズに医療や介護の専門職につなげる「早期発見・早期対処」が最も重要とされています。 マンションにおいても同様であることがさまざまなケースから当てはまるといえるでしょう。 認知症高齢者への対応に管理員等の現場職員がかかりきりになると、現場の業務にかなり支障が出てくることが想定されます。 管理組合運営に深刻な影響を及ぼすことも考えられ、マンションにおいてはどのような対策が今後必要になるのか、将来的な課題といえそうです。◆孤独死①(71歳女性) 管理員から新聞がたまっており、最近居住者を見かけないという連絡あり。居住者名簿、警察、区役所、民生委員、地域包括支援センター、3年前購入時の仲介業者などに照会するが親族等の情報なし。 単なる不在だった場合も考え、強制解錠を躊躇したが、関係者との協議の上、警察官2人、副理事長の立ち会いのもと、弊ナイスコミュニティー㈱ マンションは住生活の拠点であり、管理会社はその生活を支える一番近い存在です。設立40年超のナイスコミュニティー㈱では、共用部分の管理を主として全戸に平等にサービスを提供する立場と、高齢者など私生活にまで入り込んで行うサービスの両立を模索しているとしています。その中から、これまで取り組んできた高齢化問題の事例報告を紹介します。社2人にて窓の面格子を外し、警察官が入室。遺体を発見した。◆認知症①(転倒などのけが) 区分所有者と同居の母親(高齢・認知症あり)がマンション近くの歩道で転倒し、左眉あたりにけがをした。 管理員が救急車で病院へ搬送しようとしたところ、認知症を患っている、自宅の鍵を持っていないとの理由で病院の受け入れ先が見つからず、救急車でマンションへ戻された。 家族と連絡が取れたら近場の病院で見てもらえるとのこと。けがは幸い軽症ですぐ入院するという状態ではないことを確認した。②(徘徊) マンションエントランスで座り込んでいる高齢女性を見かけることが多々あり。オートロックの鍵をもたずに外出しているケースもあった。早朝6時前から「デイザービスの迎えが来ない」などと、マンション裏をフラフラ歩いていたりする。 別のフロアでドアを叩きながら「開けろ!」と暴れていたという報告もあり。 管理会社から不在区分所有者の親族に連絡し、対応してもらった。③(高齢者狙いの詐欺) 築45年・5棟・130戸の団地型マンション。 複数の居住者から管理会社を名乗る者の訪問があり、「このマンションは耐震性に不安がある。修繕費もこのままでは足りないのでマンションを売ってほしい」と言われたという連絡あり。 また、高齢の不在区分所有者の部屋で引越し作業が行われているので、その理由を聞いたところ、「マンションで耐震補強工事を予定しているので、1世帯750万円支払うよう指示された。払えないならマンションを売ってほしいと言われた」とのこと。 当マンションでは耐震補強の予定なし。 人物の特定はできなかったが、管理会社を名乗る怪しい業者が訪問しているとの注意喚起書面を全戸に配布。各棟役員・管理会社フロント担当同伴で全戸訪問を実施した。 今度も高齢者の1人での外出や、1人暮らしによる事件や専有部分内における漏水・火災といった事故が増えていくと考えられます。 管理会社だけでは対応に限界があり、管理組合、地域、行政の協力・連携が必要になってくることでしょう。 高齢者世帯はどのような状態で、いかなる助けが必要なのか―高齢者は公助を受けながら、地域の「お互い様の助け合い」である共助がどんどん必要になってくると考えられます。◇  ◇  ◇◆高齢化問題と管理会社の取り組み

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