大規模修繕工事新聞101号(2018年5月号)
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201855◇..3加入ですか?山本氏 実は、パークシティ溝の口では自治会の加入を巡って裁判になったことがあって、自治会が負けているんです。<参考>自治会設立当初から自治活動費を管理組合会計から自治会に支出してきた。その後、自治会と管理組合との間で自治活動について業務委託契約が結ばれてからは業務委託費として自治会に支払われてきた。 つまり自治会費を別に徴収せず、管理費から自治会費相当額(戸当たり月額200円)を自治会費に充当していたのである。これに対し、自治会から脱退した2戸の組合員が自治会費相当額の支払い義務がないこと、脱会後3カ月分の返還を求めて提訴した。 判決は管理組合から自治会への業務委託費は認められたものの、自治会からの脱退、自治会費相当額の返還についても認定された。【東京高裁・平成19・9・20】山本氏 今も自治会が管理組合からコミュニティ形成を委託されているという形をとっています。費用も管理組合から予算をいただいています。会場 自治会の財政基盤をどう確立するかで頭を悩ませています。自治会への加入率は50%とか70%というのが一般的だと思います。そこをどう解決されているのですか?山本氏 裁判後も自治会からの脱退は2戸から3戸になったたけで、1,100戸が自治会に加入しています。裁判にはなったけれど、自治会に入っている方は35年前から変わらないので、財政基盤の問題はありませんね。 全国的に自治会加入率が社会問題になるほど減っているようですが、現在ではやはり、防災・減災が他人ごとではないことに力を入れてはいかがでしょうか。会場 防災組織を整えたり、大震災に対して何をするかとなっても、自治会への加入が少ないから予算措置ができないという矛盾が生じます。それが一般マンションの現実なのではないでしょうか。菅氏 防災活動の立ち上げでは、まず予算を立てて備蓄品でどうにかしようと発想をはじめることがNGです。 防災は自助、共助とあるのはみなさんご存じだと思いますが、家具の転倒防止や、水、食料、トイレの確保も本来、自分でやるべきことです。 マンションの防災組織の呼びかけとして、自立して備えをしましょうということからはじめてはいかがでしょうか。住民の高齢化について会場 築35年では、住民の高齢化も進んでいると思います。独居老人の見守りなどはどうされていますか?山本氏 マンション内の民生委員4人が定期的に単身高齢者の住戸へ訪問しています。 また、サークルでデイケアのようなことをしてくれるボランティアがあるので、このサークルと地域包括支援センターと民生委員の3者でタッグを組んでいます。 マンション内での活動が目立つようになると、行政がフォローしてくれることが割と多いような気がします。 マンションでは2年前に災害対策用の居住者名簿を作りました。 防災の勉強会をやって、今自分との連絡先はだれだれである、いざというときに支援はいるかいらないか、行政の要支援者制度に入っているか、という名簿を作って、それをファイリングして封印して金庫の中に保管しています。 名簿の回収率も96%あって、ちょっとびっくりしました。大規模修繕工事時の施工体制について会場 うちのマンションは新築時の外装工事について、施工不良があり、そのためにタイルがよく剥離する現象が起こります。大規模修繕工事時には、どういう施工体制をとるのが理想と考えますか?菅氏 多くの大規模修繕工事では実費精算でやっています。 調査のために足場を組むことができれば一番いいのですが、一般のマンションでそんなことをやっていたらお金がいくらあっても足りないので、手の届く範囲で打診を行い、それを全体の面積にかけ直して、欠損部分の全体数量を想定します。 あくまで想定で、足場をかけた後の実数が違うことがあるため予備予算をだいたい10%くらいみています。〈8pに関連記事〉会場 外壁にタイルを貼っている、建物の真ん中に立て管を通しているのは日本だけ。マンションが何年持つかということがわからない。大規模修繕工事を何回繰り返せば建替えなのかというテーマをセミナーで期待しているのですが。菅氏 とはいえ建替えありきの政策をしているのも日本だけです。タワーマンションで湿式タイルを貼っている国はないですよね。なぜそうしないか。タワーマンションでタイル貼っていたら剥がれるから危ないんです。 日本では、そういうマンションに住んでいるということを注意していかなきゃならない。だから、修繕や建替えなどをもっと研究し、うまく付き合っていかなければならないと思っています。パークシティ溝の口

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